金銭や財産を贈ることは、相手との関係にかかわらず贈与税の対象になります。
特に親族ではない「他人」に対して贈与を行う場合、税務上のルールや注意点が増えるため、事前に理解しておくことが欠かせません。
知らずに贈与してしまうと、あとから思わぬ課税を受けることもあるため注意が必要です。
この記事では、他人同士で贈与税が課されるケースと、税負担を回避するための基本的な対策について解説します。
他人同士で贈与税がかかるケースとは
他人と親族の法律上の違いとは
贈与税における「他人」とは、民法上の親族関係にない人物を指します。
親族とは、6親等内の血族および3親等内の姻族を意味し、それ以外の人はすべて「他人」と扱われます。
したがって、恋人・婚約者・友人・内縁関係にあるパートナーなども、税務上は「他人」とされるのが原則です。
一方で、夫婦や親子であっても、法律上の婚姻関係や戸籍上の記載がなければ「他人」とみなされることがあります。
この点を誤解していると、無意識のうちに課税対象となる可能性があります。
非課税枠110万円を超えるとどうなる?
年間110万円以下の贈与については、贈与税がかかりません。
これは「基礎控除」と呼ばれ、贈与を受けた人1人につき、年間110万円までは課税されないという仕組みです。
ただし、110万円を超えると、その超過部分に対して贈与税が課されます。
税率は10%〜55%までの累進課税となっており、贈与額が大きくなるほど負担も増します。
他人同士の贈与であっても、親族間と同様にこの基礎控除が適用される点は変わりませんが、注意すべきは「誰から誰に対する贈与か」によって税務署が特に注視するケースがあることです。
恋人・友人・婚約者は「他人」に該当するのか
法的には、恋人・友人・婚約者はすべて「他人」に該当します。
婚姻届を提出していないカップルや、ただの同居人に財産を渡した場合も、税務上は赤の他人として取り扱われます。
特に婚約中のカップルが結婚式の費用や指輪代を出し合った場合、一方から一方への資金提供が贈与と見なされる可能性があります。
また、高額なプレゼントを継続的に渡している場合も、税務署が贈与税の課税対象と判断することがあります。

他人同士の贈与で贈与税を回避するには
複数年に分けて贈与する方法
贈与額が110万円を超える場合でも、1年ごとに区切って110万円以内で贈与を繰り返せば、その都度非課税で贈与することが可能です。
たとえば、220万円を一度に贈与すれば課税対象になりますが、110万円ずつ2年に分けて贈与すれば、非課税の範囲に収まります。
ただし、形式上だけで分割したように見せると、「一括贈与」とみなされる可能性があるため注意が必要です。
確実に年度を分け、贈与のたびに記録を残すようにしましょう。
契約書を用意する意味と注意点
贈与を証明するためには、「贈与契約書」を作成しておくのが効果的です。
これは、誰が誰に、どのような財産を、どのタイミングで渡したのかを明記した書面であり、税務署からの確認や調査時にも重要な証拠となります。
契約書には、日付、金額、贈与の目的などを明記し、贈与者・受贈者の署名と押印を忘れずに記載します。
口頭でのやり取りだけでは、あとから「これは贈与ではなく貸付けだった」などと誤解されることもあるため、文書化しておくことが賢明です。
税務署に怪しまれないポイントとは
他人同士の贈与は、親族間よりも税務署に注視されやすい傾向があります。
高額な贈与を頻繁に行っていたり、生活状況と贈与額が釣り合わないと、税務署は「資金の出どころ」や「実態」を疑うことがあります。
そのため、定期的な贈与であっても、贈与契約書の作成、振込記録の保管、通帳の明細などを整備し、いつでも説明できる状態にしておくことが大切です。
贈与の事実と金額が正確であれば、仮に税務署から問い合わせがあっても、正当に対応できます。

まとめ
他人同士での贈与は、親族間よりも注意すべき点が多く存在します。
特に、年間110万円を超える金額や、恋人・友人との関係性においては、贈与税の課税対象となるリスクが高くなります。
非課税枠をうまく活用するには、複数年に分けた贈与や、贈与契約書の作成が有効です。
税務署に不審を抱かれないよう、記録や証拠の整備も欠かせません。
適切な知識をもとに、計画的な贈与を進めることが重要です。